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ヨンソン



 彼を初めて見たのは、まだ神戸が泥沼だった頃の東芝戦だった。
そしてこの日の西が丘では、川崎の黒魔術師ペデルッチの老練なパスが冴え渡っていた。押される神戸。

 そんな中、西が丘に物凄い声が響いた「GO! WADA GO!」その大熊監督を上回る声の持ち主がヨンソンだった。
泥沼のチームを救うべく、サテライト監督からシーズン中に現役復帰。
そして中盤の底で年齢を感じさせずに動き、ドゥンガのように吠えた。

 ヨンソンは、フィールド上で、バクスターの戦術を具現化した。そして、チームを動かした。
そして、果敢にも攻撃参加してゴールまで決めたのだ。
0-3となり、試合が決した後半、彼に交代が告げられ、フィールドから降りる時、
西が丘の観客から、義理ではない、本当の尊敬の念が込められた拍手が巻き起こった。
そして彼は、深く頭を下げて、その拍手に応えた。

 JFLの下位争いのゲームのはずのこの試合、西が丘はまるでプレミアリーグのような雰囲気になったのだ。

 試合中、老練な技術で東芝を引っ張ったペデルッチと、老練な戦術で神戸を引っ張ったヨンソンがすれ違った。
そして、戦術が技術に勝利した。

 グッドゲームだった。そして神戸は生まれ変わった。