| 元柏のスピードキング。とにかく早い。 アントニーニョ時代にブレイクしてスーパーサブ的に使われたが、 川崎に来てからは源平など似たタイプのFWが多かったこともあり、余り使われなかった。
しかし、彼は川崎で、余りにも強烈な印象を残している。 全く1年間使われなかった98年。突然博多の森での入替戦でベンチ入りした。
そして、ゲーム終盤で投入されるや、全くもって素晴らしいキレでピッチを切り裂いた。 彼は1年間、全くで半を与えられていなかったのに、腐らずにコンディションを維持していたのである。
しかしながらロスタイム、ヴァルディネイのシュートのこぼれだまを狙ってゴール前に入ったところ、 何を考えたのか突然ヴァルディネイが、菅野にパスを送ってしまった。
サイドでキープに入るか、シュートを撃つかという選択肢以外は考えられない場面であり、 多分動揺した菅野はボールを奪われ、ここからの逆襲があのロスタイムの同点弾につながったのだ。
延長戦でも素晴らしいクロスを上げるなど、いいプレイをしていた菅野だが、 敗戦後はこのプレイに相当ショックを受けていたようで、ロッカーにいられずに、 一人外に出てきて嗚咽を上げていた。
言いようのない光景だった。私はスタンド最前列から菅野に拍手を送り。 硬い握手をして「いいプレイだった」とねぎらった。今思い出しても涙が出てくるよ。
私はそのとき、「どんなことになっても最後まで応援するから、頑張って」と言った。 その約束を果たせなかったことが、申し訳なく、情けなく、悔しい。 でも、松本郁夫を監督にするようなチームには、魂は売れなかったんだよ。許してくれ、菅野。 |
|