ロッテオリオンズ |

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いつも相手のチームを見に行っていたので、川崎球場ではいつも三塁側に座っていた私であったが、
いつも負け試合を見ているうちに、このチームに愛着を感じるようになってしまった。
これが地元意識なのだろうか?
当時は応援団などというものがロッテにはなかったため、
ガラガラのスタンドには酔っ払いと、外野でキャッチボールしていた子供くらいしかいなかった。
そんな中、このチームに降臨した、マイク・ランボー・ディアズに心奪われた。
丸太のような太い腕をぐいと振り回すと、レフトスタンドに向かってものすごい打球が打ちあがった。
その打球は、あまりにも当たりが良すぎて凄まじいドライヴがかかり、
結局ぐいーんと切れてファウルになってしまうのだ(笑)。
その迫力に、憧れのメジャーリーグの香りを感じたりしていた。
そんな中、最も思い出に残っているのは、10月過ぎのダイエー戦。
小雨の降る肌寒い消化ゲームであった。
その日の客の少なさは尋常でなく、何しろ球場が静か過ぎて、
客も選手も私語を発することができなかった。
ちょっとでもしゃべると球場中に響き渡ってしまうのである。
スパイクの泥を落とす音がエコー付きで帰ってくる静寂の中、
選手は皆口を真一文字に結んでプレーしていたのであった。
しかしながら、試合は結構白熱した乱打戦になった。
そんな中、オリオンズが2死満塁のチャンスを迎えた。
バッターはディアス。
緊迫する場面で逃げ腰になるピッチャーに、部外者の私はついに野次を飛ばしてしまった。
「こんな試合で何逃げてるんだよ、勝負しろ。」良く聞こえたはずである(笑)。
そしてままよとばかり投げ込んだ投球をディアスがフルスイングすると、
その打球はピッチャーゴロとなってグラブに収まったのである。
そしてその打球を打ったディアスといえば、ピッチャーに対して凄い迫力で罵声を浴びせているだけで、
一歩も一塁に向かって歩こうともしなかった。
この静寂の中で、二人とも少ない客を意識して、意地をかけた勝負をしたのであった。
それがひしひしと伝わってきた。
そしてしばし、私はパリーグの世界、川崎球場に足を運ぶことになった。
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