アイスホッケー資産
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初のプレイオフ
 2006年、2月16,18,19にち。東伏見アイスアリーナにアイスホッケーを見に行った。

 既に花粉が飛び始めていて本当は寝ていたかったのだが、
我らが日光神戸アイスバックスが史上初めてプレーオフに進出して、しかもその相手がコクドになった、ということで、
これは是が非でも見ておかないといけないと思い、気力で出かけたのであった。

 しかし、今年のプレーオフ出場は、単純に手放しで喜べない微妙なものでもあった。

 従来の日本リーグは基本的に6チーム中4チームがプレーオフ。
この中で何十年もやっていて4位に入ったこともない、という古河電工の弱さも凄いことだが、
そこから更に貧乏になったアイスバックスは、存続できるだけでも感動的な中で、
毎年苦しいシーズンを戦っていた。

 雪印撤退で札幌ポラリスができたときに、やっとライバルができたように思えたのだが、
ポラリスが1年で撤退した翌年は辛かった。5チーム中4チームがプレーオフ出場というのである。
そして、我々1チームだけが蚊帳の外という屈辱的な状況を味わう。

 やがて西武とコクドが合併して、4チームにまで日本リーグが縮小され、いよいよ発展的に
アジアリーグがスタートして、8チームの戦いになるも、中国の2チームが激弱だったため、
事実上6チーム中6位という位置に落ち着いた。

 そして、今年、ロシアのチームが撤退して、2チームが加入。9チーム制になり、6位にまで
プレーオフ枠が拡大されたのである。ところが、新加入の韓国チームがまた激弱だったのであった。
そのため、レギュラーシーズンは6位を独走。何とも微妙な定位置を確保して、
プレーオフ進出となったのであった。

 ということで、私の中で勝手に設定した目標(他の人たちも似たようなものだったと思うが)は、
日光への帰還、であった。
 5戦3勝形式のプレーオフは、先に東伏見で3試合。そして日光で 2試合というレギュレーション。
つまり、3試合中1試合でも 勝利すれば、日光に帰れるのである。そして日光に帰れば何かが、、。


 木曜の第1戦は、緊迫した試合ながらも、点の入り方は何とも独特。
1ピリ開始1分に先制され、2ピリ開始1分に追いつき、2ピリに追加点を許すも、
3ピリのパワープレー時に再度同点。
 そして試合はサドンデスの延長(決着が付くまで延々と延長)に入ったものの、
開始37秒にカウンターから抜けたコクドのユールが、サドンデスゴール。
 最初から目標に手をかけたものの、それは一瞬で夢と消えた。


 2戦目は日光側にのみファウルが目立ち、非常に不利な展開。
しかし、ひたすらショートハンドを耐える中、1ピリ17分。ついに先制!
しかも、1分たたないうちに追加点! 異様に盛り上がる東伏見。
昨日はもう一歩だったが、今日こそ、、、。

 しかし、これが微妙に心理面での隙を生んだのか、なんと、直後に
1点を失点。そして、わずかその数十秒後に、更に失点。
 公式記録上では、17分と18分の2分間に2−2になった、という壮絶な展開。
すごいスポーツである。改めてアイスホッケーに恐怖を感じ、慄然となる。
 その後一旦立て直すものの、2ピリに2点追加されたあたりで力尽き、
3ピリは緊張感が切れ、凡ミスから失点。結局6−2で完敗。


 3戦目も耐える展開の中、先制点はコクド。後方からのパスを手で落として、
ゴールに流し込まれる。シュートはちゃんとスティックだったので、ルール上は
問題ないものの、これは相手からすると脱力感が大きいいやなプレーだ。

 何とか1勝という執念から追いつくが、自力の差か、1ピリ終了間際に突き放され、
更に2ピリに2点失点。4−1という絶望的なスコアになった。

 正直、私はこの時点で諦め、集中が切れた。が、落胆した私のうつろな目線の先で、
ポディーンからのパスが前線の飯村にすっとつながり、ゴール。2点差。
 そして、3ピリに更にポディーン→飯村で1点返し、1点差。怒涛の反撃だ。
 観客がいないと成り立たないのがプロスポーツだが、白熱した試合になると、
観客の存在は意識から消える。ゲームと一体化する瞬間が確かにそこにあった。

 プレーが切れて、一息ついた時、選手を励ます立場であるはずの私が、
選手たちから逆に励まされていたことに気が付いた。
「俺たちは絶対に諦めない、だから、お前も諦めるな。」
プレーを通して、確かにそう言われたように思った。

 ラスト2分。この3試合で初めてのタイムアウト。そして、GK春名があがって6人攻撃を仕掛ける。
ひたすら守りを固めるコクド。攻め込みながらもぎりぎりで止められ、残りは3秒。
しかしまだあきらめない。フェイスオフでは、ゴール側に全員が集まり、最後の賭けに出る。
 パックが落とされ、なんとこれを味方側に出すことに成功。そしてシュート。
コクドはほとんど全員がゴール前に体を投げ出し、まるでアメフトの4THダウンゴール前1ヤード状態。
そして、奇跡は起きずに3連敗で敗退が決定したのであった。


 結果はスイープだったが、内容は日本シリーズと違い、非常に濃い三日間だった。
試合後に、いつもクールなGK春名が泣いているように見えた。それをポディーンが
慰めている姿が、何ともいえない光景だった。

 しかし、プレイヤーを励ますべき観客である私が、逆に励まされているようじゃダメだね。
ほんの紙一重の勝負の境目は、私のようなゆるい観客のせいなのかもしれない。


 微妙なプレーオフと冒頭に書いたが、この息詰まる熱戦を、本当の戦いを肌で味わえたことは、
今まで全く参加すらできなかったポストシーズンを、全身で体感できたのは、
日光にとって、私のような客にとっても明らかに大きな一歩になったと思う。

 試合後にしばらくその場から動けないような喪失感。それが来期の日常にフィードバックする。
そして一歩でもいいから、余分に成長する。その歩みを、時間をかけて一歩ずつ進めていけば、
何年かかるかはわからないが、やがて大きなうねりになって、大輪の花を咲かせる時が来るのだろう。

 この年になっても、色々と見たい夢が新しく出て来るよね。
最近、長生きしたいなと心から思うようになって来た。この世界、未練ばかりがたくさん残っているね。 
2006/2/26