ユニフォーム資産
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セレッソ大阪


一方、肝心の昇格チームであるセレッソについては、
あまりこれといった印象がない。

サポーターの着ていたユニフォームのピンクが強烈だったのと、
そのユニフォームを着ていたモウラという、アルシンドに輪をかけたような
キャラクターの選手とのギャップがあまりにも凄まじかったのだけが印象的だった。

というのはもちろん嘘で、この年の柏でのレイソル対セレッソ戦は忘れじのゲームだ。

後塵を拝していたレイソルは、ここで負けたら終わりという状況で、
このときのムードは異常だった。駅前あたりから殺気が漂っていたのだ。
チケットは言うまでもなく完売で、ユニフォームを着て歩いていると、
町中の人たちから羨望のまなざしで見つめられたのだ。

セレッソの面々が芝を見に出てきた頃には、既にスタンドは満員で、
彼らには壮絶なブーイングが浴びせられた。
これほどまでにアウェイ、いやホームの雰囲気を味わったことは
未だかつてない経験で、そしてその後もない。空前絶後とはこういうことを言うのだ。

さらにスタメン発表時に、スタンドがどよめく。
ここまでプレッシャーで主に前線の選手がつぶれてしまい、
中盤の主力アイルトンを外してロペスを起用して
何とか機能させていたのがレイソルだった。

ところが、この大一番を前に、何とゼ・セルジオ監督は
ロペスをベンチからも外したのである。
そして起用されたのは今期初スタメン。巨漢DFのへジスだった。

この年のレイソルは当時は珍しくない外国人5人体制であった。
エースのカレッカと、元ブラジル代表DFネルシーニョが絶対的な存在。
そしてゲームメーカーのアイルトンが当初のレギュラーだった。
そしてFWの緊急事態で起用されたのはロペス。

当時は外国人が出場停止になると、外国人枠もつかえなくなるルールだったから、
どう考えてもヘジスには出番が来るとは思えなかった。
近場のアウェイ戦ではよく帯同してスタンドから観戦したりしていたヘジスを、
だから私は試合前によく「頑張ってね」と声をかけ握手したりして、励ましていたのだ。

この大一番でのヘジスの緊張感が、まるで自分のことのように襲いかかってきた。
吐き気を催すくらいのプレッシャーだ。もう他人事ではすまなかった。

ところが試合が始まると、レイソルは今まで見せたことのない獰猛なまでの迫力で、
首位セレッソを攻めたてたのだ。
「強ぇ。」スタンドは半ば呆然とした感じで見つめていたが、やがて一体化して
怒涛のうねりでセレッソに襲いかからんばかりの雰囲気になった。

最終ラインにブラジル人二人を配した布陣は、想像以上に機能し、
特に放りこまれるボールは、ヘジスがことごとく跳ね返した。

圧巻はカレッカだ。重戦車の如き迫力で50メートル以上はドリブルで駆け抜けただろうか、
相手エリアで倒されてPKを得たのだ。

そして足を治療していたカレッカに代わってそのPKを蹴りに行ったのが、ヘジスだった。
ヘジスは落ち着いてゴールに蹴りこむと、
そのまままるで放心したかのようにゴール裏まで歩み寄ると、
スタンドとのぎりぎりの境界である防護ネットに手をかけ、
ネット越し目前の熱狂している観客さえ見えていないかのように、
そして目を伏せたのだ。

言いようのない光景だ。神々しささえ感じさせる瞬間であった。

おっと、レイソルの話ばかりになってしまった。
このユニフォームは当時と同じ型だが、96年のもののようである。
1994-6